中国商標 Q&A

 中国商標の8つのQ&Aを、北京本部(Dragon IP)の商標部から紹介させていただきます。

 

Q1:中国商標出願の流れは?
A1:中国の商標出願の流れおよび時間経過は、下記のようになります。



 上図のとおり、中国商標出願には、通常、12~16ヶ月が必要となります。
 現在の中国商標局の審査官は、分類ごとに分けて商標審査を行っていますので、出願が集中する区分と、出願が少ない区分の審査官の審査期間が異なることも良くあります。従いまして、同日の複数区分における同一商標の出願は、登録日が半年前後に分かれることもあります。その場合、中国の代理人と連絡して、中国商標局へ審査情況の確認、または登録証の発行状況の確認も大事です。
 


Q2:中国商標出願前に商標調査を行うべきか?
A2:はい、中国商標出願の前に商標調査を行うべきです。

 現在、中国商標の年間出願数は、100万件(一商標一区分の出願を一件と計算)を超えており、先願または先登録商標の存在が莫大なものでございます。日本で、すでに登録されていたとしても、中国では拒絶される場合も少なくありません。うちには、冒認出願による拒絶も多いです。
 よって、商標調査は、出願商標の登録可能性を判断するのに有益な方法であると同時に、いち早く冒認出願を発見し、有効な法的手段をとることも可能となります。
 


Q3:中国商標調査の際に注意すべきところは?
A3:中国商標調査の際、実際の出願商標の態様で調査を行うべきです。

 調査商標と実際の出願商標と異なる場合、代理人の判断が審査官の判断と異なってしまい、審査官の判断が予想外のものとなりかねませんので、調査商標と出願商標と同一であるのが好ましいです。
 また、中国商標局は、日本語のカタカナとひらがなを図形として把握することにも注意すべきです。具体的には、日本でカタカナとローマ字の上下二段で登録されている商標を、中国に出願する際、中国商標局は、その商標を図形と英文字の組合せ商標であると把握します。つまり、カタカナの部分は図形で、ローマ字の部分は英文であるとして審査します。
 例えば、35類において、ひらがな、ローマ字、漢字の組合せ商標を調査する場合、調査は、35類における図形(ひらがな)の調査、35類におけるアルファベット(ローマ字)の調査、および35類における漢字の調査の3つになります。


Q4:中国商標出願に必要な書類は?
A4:中国出願に①商標出願の願書、②委任状(必須ではない)、および③会社登録謄本(必要な場合がある)が必要です。

 ① 願書について
 通常、代理人が作成するものです。
 願書は、出願後の出願報告の際にクライアントにその写しを送りしておりますが、ご指示をいただければ出願前の確認も可能です。
 ② 委任状について
 クライアントに準備していただく書類です。
 委任状には、依頼者の「担当者の署名」または「会社の社印の押捺」が必要です。また、委任状の原本を提出する必要はなく、費用の節約の観点から、スキャンしたデータを電子メール、またはファックスにて弊所にご送付いただく形になります。
 また、電子出願をご利用の場合、委任状は必要ありません。
 ③ 会社の登記簿謄本について
 クライアントに準備していただく書類ですが、通常、提出する必要がありません。
 必要な場合とは、例えば、2013年1月、第35類において初めて医薬品に関する小売または卸売り役務の登録出願が開始された後1ヶ月の間、医薬品に関する小売または卸売り役務を指定した出願人の登記簿謄本が求められていました。以上のような特別な場合を除けば、商標出願に登記簿謄本は必要ありません。


Q5:中国商標出願の補正の注意点は?
A5:中国商標出願の補正は、通常、指定商品に関するものが多く、代理人や、審査官の意 見を聞くことが大事です。

 現行中国商標法は、一商標一区分制を採用しているため、分割出願などの問題はありません。改正中の中国商標法は、一商標多区分制を導入しようとしていますので、分割出願の問題がその後に出てくるかもしれませんが、ここでは、指定商品の補正についてご説明いたします。
 ① 出願前の準備について
 まず、出願前に指定商品の補正命令を避けるために、中国代理人がよくとる方法としては、中国の「類似商品および役務区分表」(以下「区分表」という)に記載されている商品をクライアントに勧めることです。区分表はニーズ協定に基づくものですので、大小の改正などが行われていますが、それにもかかわらず、新しい商品のすべてが記載されているわけではありません。
 特に日本を含む海外の企業の場合、オリジナルの商品名称、または、外国ですでに登録されている商品名称を使用したい場合が多いのですが、その場合、できるだけ当該商品の上位概念を抽出して区分表の記載に近い表現を採用することをお勧めします。
 ② 出願後の補正について
 次に、商標局に意見書、補正書を提出する前に中国代理人と充分に相談されることをお勧めします。特に、経験豊かな代理人は、指定商品に関する適切なアドバイを提供できますので、代理人との十分なコミュニケーションは、商品を削除してしまったり、最終的に出願が取り消されたりするといった出願人に不利な事態の発生を回避することにとって重要です。また、補正期間も法定期間ですので、正確的、かつ迅速的な報告を受けることも重要です。
 弊所では、代理人からクライアントへの補正命令のご報告とコメントは、補正命令を受けてから3日仕事日以内に必ずお送りしています。補正命令に的確に対処するために、クライアントへのご報告の前に審査官に電話や面談で意見を伺うこともあります。


Q6:中国商標の拒絶査定通知書と日本の拒絶理由通知と違いは?
A6:前者は査定ですが、後者は審査官の意見です。両者は、全く違います。

 現行、中国商標法によれば、中国では日本のような「最初の拒絶理由通知」、「最後の拒絶理由通知」のようなものがなく、拒絶査定(中国語:驳回理由通知书)しかありません。つまり、中国では、審査官が拒絶理由を見つけた場合、出願人には意見を述べる機会が与えられず、いきなり拒絶査定が出されます。
 そして、拒絶査定に対する救済として、日本と同様に出願人は審判を請求することができますが、その請求が可能な期間が短く、査定到達日から15日とされています。このため、代理人の能力や、正確かつ迅速に拒絶査定をクライアントに報告できるか否かが肝心なところになります。


Q7:中国商標公告の位置づけは?
A7:中国商標公告期間内に公告商標に対して異議申立てができ、商標の登録を阻止することができますので、第三者にとっては極めて重要な期間です。

 商標公告期間は、公告日から3ヶ月です。また、当該期間は、異議申立て期間とも言われ、商標に対して異議申立てをすることができます。
 異議申立て制度は日本にもありますが、両国の違いは、次のとおりです。日本は登録後(付与後)異議申立て制度であるのに対して、中国は登録前(付与前)異議申立て制度であること。従いまして、中国の異議申立ては、商標登録査定に大きく影響を与え、異議申立てで勝てば商標が登録されないことになり、大変重要な制度です。
 このため、競争相手の出願商標を監視したり、自社シンボルマークと類似の商標出願を監視したりすることも大切な知財活動の一環になります。


Q8:中国商標登録後の注意点は?
A8:中国で商標が登録された後、商標の使用に注意すべきです。

 中国では登録商標が数多く存在していますが、実際に使用されている商標はわずかであることも周知の通りです。このため、出願商標が先登録商標により拒絶された場合において、先登録の引用商標が不使用取消の要件に満たすとき、通常、それに対して取消を申請します。つまり、登録商標の使用証拠が大変重要な意義を持つものとなります。そこで、中国において商標の使用がどのように理解されているのかについて説明させていただきます。
 日本商標法と異なり、中国商標法では、商標の「使用」に関する明確な定義はありませんが、中国の最高人民法院(日本の最高裁判所に相当する機関)の司法解釈、商標局の審査ガイドラインでは、商標の使用は、商標の商業的使用を指すと明記されています。商標の商業的使用には、商品、商品の包装、または容器および商品取引書類における使用、または、商標を広告宣伝、展覧、およびその他商業活動における使用が含まれます。要約しますと、中国でいう「商標の商業的使用」は、日本商標法第2条第3項各号に掲げられているものと同じであると言えます。
 このように、日本と中国で商標の使用概念の理解が同じであると考えられますが、実務上の運用、具体的な証拠資料などが日本と大きく違うところもありますので、自らの知的財産を守るために、使用証拠の収集などにおいて中国の代理人とのスムーズなコミュニケーションが欠かせないものとなります。
 また、商標の使用の際、登録商標を改変して使用する場合も少なくありません。改変後の標章が登録されておらず且つその改変が登録商標の実質的な部分を改変したものに該当する場合、当該使用は、登録商標の使用とみなされず、新しい標章の使用となってしまいます。このような場合、登録商標を改変される前に中国の代理人と相談されることをお勧めいたします。状況によっては、新規出願も考慮する必要があります。

 以上、中国商標の8つのQ&Aを紹介させていただきました。

 上記のQ&A以外の事項についてご質問がございましたら、忌憚無くご連絡ください。

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 商標Email窓口:jpdepartment@dragonip.com

 
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 また、こちらに北京本部(Dragon IP)の商標部からの紹介がございますので、ご覧いただければ幸いです。