銀 龍 物 語 Epi.08 日本旅行記

機械部長
弁理士 金成哲



 今年の6/9~6/16、初めて旅行という名目で東京に戻りました。東京ではかつて3年間、生活・仕事をしているので、私たち夫婦にとっては旅行先としての東京には特別な吸引力はないのですが、東京で生まれた長女に出生地がどのようなところかを体験してもらうため、東京への家族旅行を決めました。

 長女からは「どうして私だけが日本で生まれたの?日本はどんなところなの?」といつも質問を受けていました。また、今回の旅行のもう一つの目的は、子供たちを日本のディズニーランドに連れて行くことでしたが、今回の旅行では思いがけず、かつて東京で生活・仕事をしていたときにはまったく気づくことのなかった厳しい日本文化を認識させられることになりました。

 旅行の目的地を東京に決めた後、どこに住むかという問題が生じました。日本のホテルは部屋数というよりも宿泊人数によって宿泊費用が決まります。このため、私たちは大人2人、子供2人で一部屋でよいのですが、実際の宿泊費用は相当に高くなることが予想されました。

 次に想定されたのは、飲食の問題でした。子供たちは「煎じる・炒める・蒸す・煮る・揚げる」という中華料理に慣れているので、日本でも子供たちに中華料理を食べさせてあげたいと考えていました。しかし、普通のホテルにはそれを作る設備があるはずもなく、ホテルの中でそれを作ってあげることはできません。

 どうしたらよいものかと思案していたところ、突然、韓国の「民泊」を思い出しました。「民泊」の文字から理解すれば、一般家庭の部屋を旅館として旅行者に提供するサービスです。そこで、インターネットで日本の「民泊」の状況を調べ始めました。結果は、日本に長期滞在したことのある私たちを驚かせるものでした。

 日本には、意外にも、専門的に「民泊」のサービスを提供するAPPがあり、対象は中国などの外国の旅行者でした。そのAPPを調べてわかったことは、東京、上野などの交通が便利な場所でも「民泊」を利用可能であるが、値段的にはホテルと比べてあまり差がないことでした。このため、神奈川県、千葉県など、都心から少し離れたところで「民泊」を探し始めました。最終的に、値段、交通の利便性などの要素を考慮して、羽田空港に近いJR蒲田駅付近の「民泊」を選び、APP上で家主と直接やり取りして宿泊費を支払いました。

 「民泊」をすると決めた後、いくつかの実際上の問題を考えなければなりませんでした。例えば、「民泊」の場所までどのように行くか、家主とどうやって会うか、ゴミはどのように捨てるかなどです。結果としては、これらの問題について心配は不要であったことがわかりました。

 まず、「民泊」の場所までの行き方ですが、家主に宿泊費を支払った後、PDFが添付されたメールを受け取りました。そのPDFには、JR蒲田駅から「民泊」の場所までの詳細な経路が日本語と英語の両方で記載されていました。その詳細さの程度は、中国では想像を絶するほどのものでした。

 そのPDFの1枚目はJR蒲田駅の西口を出たところから開始しており、「民泊」のマンションのドアまでのルートにおいて道の角を曲がるまたは入り口を選択するための、進行方向を示す矢印付きの写真が複数掲載されていました。また、写真と写真との間が矢印でつながれ、順序が一目瞭然でした。このPDFの資料について、日本で特許明細書の作成を3年間経験した専利代理人である私でも、感服せざるをえませんでした。

 次に、鍵の受け渡しですが、もし飛行機が遅れて夜中に到着することになってしまった場合、夜中の到着で家主のおじさんが不機嫌になって日本はルールが厳しいことなどを指導されてしまったらどうしようかとも心配していました。しかし、家主からのメールを見て、家主と対面する必要がないことがわかりました。家主は、鍵を部屋のポストに事前に入れておき、私たちはそこから鍵を取るだけでよかったのです。

 ほかに、実際に部屋に入る前にすごく心配していたことは、「民泊」の予約時にネットで見た部屋の設備条件と写真とが、実際の部屋のものと異なっていたらどうしよう、という点でした。しかし、6月8日の夜23時過ぎにおそるおそる部屋に入って電気を付けたとき、日本人の誠意にまたひとつ感動してしまいました。部屋の実際の状況は写真で見たものよりもよく、設備条件は完全に同じでした。

 洗面用具はいうまでもなく、まったく新しいお鍋、茶碗に、箸、スプーン、炊飯器など、すべてが揃っていました。私たちは、スーパーで食材を買ってくるだけでよく、すぐに料理を作ることができるという状況でした。さらに、ベッドカバーなども複数準備されており、引き出しの中に綺麗にしまわれていました。

 最後は、ゴミの処理の問題です。日本に行く前は、ゴミをどのように分類するか、各曜日でどの種類のゴミを捨ててよいのか、という点を心配していましたが、驚くべきことに、その「民泊」のマンションでは各曜日で捨てることができるゴミの種類は決まっておらず、ゴミを分類するだけでよかったのです。

 このことは、私たちにとってすごくありがたいことでした。北京に戻ってから考えてみたところ、そのようなマンションだからこそ中国旅行客に「民泊」を提供することができ、そうでなければ、中国の習慣からすればゴミの問題だけでその「民泊」の人気が下がってしまいそうです。。。

 以上が、今回の旅行における「日本の民泊」に対する真新しい認識です。

 次に、日本で3年間、生活・仕事をしていたときには気づかなかった、電車の中でのふるまいに関する日中の考え方の相違について、皆様とシェアしたいと思います。

 中国では、電車の中で、疲れきった子供(10歳以下)が立っている又は親に抱かれている場合、大部分の人は席を譲ります。このことは、私にとって確定的な方程式のようなものになっています。しかし、今回日本で私にとっては「冷淡な体験」をすることになりました。ディズニーランドから「民泊」の場所まではある程度の距離があり、電車には1時間以上乗っている必要があるので、一日遊びまわった子供は帰りの電車の中ですでに疲労困憊です。

 実は、今回、ディズニーランドには2回行ったのですが、毎回、私は片手で子供を抱きかかえ、片手で手すりにつかまっていました。もし中国であれば、100%の確率で席を譲ってもらえます。しかし、日本では「シルバーシート」の前でも、誰も席を譲ってくれませんでした。この点は、日本で数年間生活したことのある私でも、なかなか理解することができていないところです。

 日本人にとっては、3歳を過ぎた子供は席を譲る対象ではないのかもしれません。みなさまがそのような統一的な考えをお持ちであることには感服いたしますが、中国で子供時代も過ごしてきた私にとっては、やっぱり、「疲れきった子供を抱いている人」には譲ってもよいような気がしています。ただ、これはたった2回の経験なので、もしかしたら運が悪かっただけかもしれない可能性があると考えてみたりもしております。

『私は、こうなっちゃったので、抱っこしました。』
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                   (銀龍物語Epi.08  おしまい)